事件の経過

今回の事件で起訴、判決を受けた関係者は、以下の5人。3人の裁判は終結し、吉田被告と水谷被告の2人が判決を不服として、最高裁に上告中である。

吉田晃被告
静和病院元院長。詐欺罪で静岡地検沼津支部が起訴。静岡地裁沼津支部で懲役6年6ヶ月の実刑判決。東京高裁での控訴棄却を経て、現在、最高裁に上告中。

水谷信子被告
静和病院元事務長。健康保険法違反、詐欺罪で静岡地検沼津支部が起訴。静岡地裁沼津支部で懲役5年6ヶ月の実刑判決。東京高裁での控訴棄却を経て、現在、最高裁に上告中。

A被告
静和病院元総婦長。健康保険法違反、詐欺罪で静岡地検沼津支部が起訴。静岡地裁沼津支部で懲役2年6月、執行猶予4年の判決。

B被告
静和病院元医事課主任。健康保険法違反、詐欺罪で静岡地検沼津支部が起訴。静岡地裁沼津支部で懲役2年、執行猶予4年の判決。

C被告
静和病院元総務課長。健康保険法違反で静岡地検沼津支部が略式起訴。沼津簡易裁判所は罰金20万円の略式命令。即日納付。

2008年(平成20年)
4月23日 午前8時30分
静和病院、吉田院長の自宅、に家宅捜索。下田署、県警の捜査員ら約100人が入る。

健康保険法違反と詐欺の疑いで家宅捜索。不正受給額の総額は数億円に達する可能性もある。不正請求は数年前から行われていた可能性もある。

50代の男性看護師、別の看護助手が証言。
「病院の不正は日常的だった」
「退職した看護師、夜勤担当したことに」
「あらかじめ退職者の名前が記されたカルテに記録を記入していた。こうした手法は病院長や看護部長から指示があった」
「昼間は50人を看護師ら2~3人で担当した。夜勤で150人に対して1人の時もあった」
看護師は「複数の退職者は県などに実態を伝えたはずだ」と話した。
こうした偽装は少なくとも1年以上は続いていたという。
県は、県警の家宅捜索を受け、保険所の職員ら16名を派遣。医療法に基づく行政処分をする可能性もあるとしている。(朝日4月23日)

丘の上、地域から隔絶
3年前に、病院側からの申し出で賀茂医師会を脱会
医療関係者の間では開院当初からトラブルの多い病院との見方があった
開院間もない頃、医師の配置基準を満たしていないとして、県の指導を受けた
数年前に院長が地元医師会と訴訟で争ったこともあった
1月に佐賀県医師会から「看護師の勧誘行為が強引」と抗議を受けた
県や賀茂保険局は前年秋の医療監視では、医師が一人少なかったが、看護師は規定どおり配置されていた。

下田署、県警生活環境課、捜査二課が、健康保険法違反容疑で家宅捜索。詐欺の疑いも視野に入れて調べている。実際には患者を診ていないのに診療したように偽り、医療費を不正に受給した疑いも持たれている。看護師数の水増しや診療報酬の不正受給は長年にわたり行われていたとみられる。(静岡4月23日)

同病院は、数年間にわたって看護師の勤務時間を水増ししたり、アルバイトやパートなど非常勤の看護師を常勤の看護師にみせかけ、実際の数よりも多く申請していた疑いが持たれている。またカルテを改ざんして診療実績を水増ししたり、退職者を常勤の看護師の数に含めていた可能性もあり、不正に受け取った診療報酬は昨年までで数億円に上るとみられる。(毎日4月24日)

県警は内部告発などで得た情報をもとに数ヶ月間、内偵捜査を進めてきた。
数年前に地元医師会を脱会。以後救急の当番医から外れた。

「架空の勤務表あった」男性看護師、実態語る。
約1年前から同病院に勤める男性看護師は23日、病院での勤務実態を明らかにした。
看護カルテに既に辞めた看護師の名前を書かせ、実体の約3倍の看護師が勤務しているように装っていた。
あらかじめ架空の人物の名前が入った出勤表も作られていた。
看護師しかできない吸引作業や点滴の調整をヘルパーにもやらせていた。
保健所の調査には、退職した看護師を呼んだり、架空の人物を仕立てて対応していた。
認知症の患者には廊下に出して食事をさせていた。
一人で日中50人、夜勤では150人を担当したことがある。

看護師水増し、虚偽申請の疑い
診療報酬を余計に受け取った疑いが持たれている。(伊豆4月24日)

吉田晃院長ら病院幹部が水増し請求を指示していた疑いの強いことが、県警生活環境課などの調べで分かった。
複数の事務職員が、吉田院長や看護部長からの指示を受け、診療報酬を不正受給していたことを認めているという。(中日4月24日)

家宅捜索は24日午前1時40分過ぎまで、約17時間にわたって続いた。
約100箱分の関係資料を押収した。看護師らの勤務表や給与関係などの資料を押収。
太田町長のコメント「町おこしをやっている時にマイナスイメージで遺憾だ。入院患者は大部分が町外者と聞いているが、通院の町民もいるわけで、今後の推移を注意深く見守りたい」(伊豆4月25日)

勤務表2つ作り分け 県監査の対策か
看護師を常勤に見せかけた虚偽の勤務表と、実際の勤務状況を記した勤務表の2種類を作成。一方は内部資料とし、もう一方は県が年1回実施する「医療監査」などに備えて使い分けていたとみられる。県警生活閑環境課、下田署の調べで分かった。
県警と下田署は30人体制で押収資料の分析を始めた。
静和病院が06年4月に静岡社会保険事務所に届け出た看護配置は、一般病床(55床)で「15対1」。基本報酬として、患者一人あたり9540円。「15対1」の比率を保とうとした疑いが持たれている。(朝日4月25日)

勤務表「常勤偽装」
看護師数 届け出基準以下か
健康保険法違反と詐欺容疑で県警の捜査を受けた
捜査関係者によると、病院は非常勤職員の承認を得ずに、常勤扱いにしていたとみられる。給与も非常勤と同額だったため、職員にも認識がなかったという。
看護カルテには退職者のほか、架空の看護師名を書くように指示されてたという。
吉田院長は任意聴取に「何も知らない」と容疑を否認している。
同病院の一般病床は55床で、配置基準は届けが出された2006年4月以降変更はなかった。満床だとすれば、看護師の夜勤交代などを考慮し、1日あたり11人以上の看護師が必要になる。
療養病床については、静岡社保局への届け出は、がんや神経難病など定められた疾病の入院患者が「8割未満」としており、患者25人に対して1人の基準だった。病床数は252床。満床の場合は、1日あたり必要看護師数が31人以上になる。
これは外来担当の看護師数を除いた数で、満床の場合、入院患者だけで1日に計42人以上の看護師が必要な計算になる。しかし、同病院の男性看護師は「正看護師は6人ぐらいで、准看護師も20人ぐらいしかいなかった」と証言している。(読売4月25日)

県賀茂健康福祉センターの岩間真人所長は、県賀茂地域支援局での定例会見で、捜査の前に苦情や内部告発が寄せられていたことを明らかにした。
看護師の採用時に看護師免許の原本を提出させて預かる例があったことが25日、複数の証言で分かった。
県警は同病院が「1対15」の比率を維持するために看護師数を水増しした可能性があるとみて、詳しく調べている。(毎日4月26日)

4月28日
県は、28日、近く医療法に基づき同病院を立ち入り調査して職員不足の実態を確認し、適性な人員配置などを指導する方針を明らかにした。
昨年10月にも立ち入り検査したが、不正を見つけられなかった。
院長が刑事処罰を受けた場合については、「状況に応じ医療法の対応を取る」と語り、県が出す病院開設許可を取り消す可能性にも言及した。(読売4月29日)

4月30日
県の立ち入り検査 検査結果公表
30日午前10時半から午後2時まで、賀茂保険所、県医療室の職員13人が実施。
当日勤務していた3人の医師(院長含む)と看護師29人(常勤22、非常勤7)から聞き取り。
30日現在の看護師数は、常勤36人、非常勤8人の計44人。
常勤換算で41.6で過去1年間の入院平均数から割り出した医療法で定める標準数61人よりも19.4人不足。
医師は常勤4人、非常勤9人の13人。常勤換算で7.5人。標準数は8.6人で1.1人不足。
県は12日までに改善計画を提出するように指示した。
10月の立ち入りでは、医師9.3人、看護師66人。
県医療室の村上昌弘室長は「有罪確定の場合、病院の開設許可を取り消しを検討する可能性がある」と述べた。(毎日5月2日)

5月12日
確保計画発表
県は5月12日、静和病院から提出された医療職員確保計画を公表した。
看護師は、今年末までに22人。医師は9月末までに2人を採用し、標準数を達成する。
入院患者を今月末までに20人、6月末までにさらに12人、転院、退院で減らし、看護師を常勤換算で48.8人(実勤務数52人)まで増員する。
この後、年末までに医師9.5人(15人)、看護師61.8人(67人)まで確保し、入院患者も満床の307人に戻す。

6月某日
吉田院長が静岡社会保険事務所を訪れ、1億円の小切手を示し、診療報酬の一部返納を申し入れたが、受け取りを拒否された。

8月25日
県警・下田署が、院長、事務長に任意の事情聴取を開始

10月10日
職員が自殺
伊東市八幡野の雑木林で、元医療連携課長が木にかけたひもで、首をつって死亡しているのが発見された。8月25日に家族から家出人捜索願が出ていた。

11月7日
県警は、健康保険法違反の疑いで、水谷信子事務長と元総務課長のC容疑者を逮捕。
病院と病院敷地内にある水谷容疑者宅を捜索した。
午前7時40分頃、県警の捜査員約20人が病院に入る。9時50分、C容疑者、水谷容疑者が捜査車両に乗り込んだ。

事務長は「事務員が勝手にやったこと」
事務職員「院長や事務長も知っているはず」(静岡)

元看護師によると、県の監査日はアルバイトを雇って配置し、退職した看護師らの名前を書いたプレートを着けさせていた。「病院幹部の指示だった」という。
10月末で常勤、非常勤合わせて医師が13人、看護師73人、入院患者261人で「バランスが取れてきた(県医療室)」という。(朝日11月8日)

C容疑者が、診療報酬を過大に受給する目的で虚偽の申請をしていたことを認める供述をしていることが分かった。平成18年に4人、19年に5人を常勤の看護師と装って、届けていた。
18年に虚偽記載した4人の名前は、19年も記載していたという。(静岡11月9日)

逮捕前の県警の任意の事情聴取に対し、「上司の指示に従ってやった。院長も事務長も(不正を)知っていたはずだ」との趣旨の話をしていたことが8日分かった。
一方、捜査関係者などによると、病院が捜査を受けて以降、病院の看護職員に口止めしていたことも判明。隠蔽工作を図った可能性があるとみている。(読売)

06年と07年の7月、健康保険加入手続きをする際、延べ9人分の非常勤看護師の給与を増やした書類を提出。06年4月と10月、退職した2人の健康保険資格喪失届を提出してなかった疑い。水谷容疑者は否認、甲斐容疑者は認めているという。容疑事実は、診療報酬(入院基本料)の算定基準となる常勤看護師の人数を増やすための偽装工作とみられる。(毎日)

静和病院では、常勤として申請していた医師が開業していたことが昨年発覚し、県から虚偽申請との指摘を受け、診療報酬の過払い金を分割して返還していたことが分かった。(静岡11月10日)

「暴かれた錬金術 静和病院事件の裏側」連載
(東京11月11日、13日)

11月26日
県警は、健康保険法の虚偽申告容疑で逮捕されている、事務長を詐欺容疑で27日にも再逮捕する方針を固めた。
捜査関係者によると、C容疑者は容疑を認めているが、水谷容疑者は容疑を否認している。
発表によると、両容疑者は、2006年7月と2007年7月にアルバイトや非常勤だった看護職員延べ9人が常勤だったかのように装い、実際の支給額よりも多い給与を記載した書類を三島社会保険事務所に提出した疑い。虚偽の報告で診療報酬を不正に請求して金をだまし取った、との見方。
(読売)

事務長再逮捕へ 少なくとも600万円詐欺容疑
看護師比率を15対1になるようにうその記載をして静岡社会保険事務所に提出。一般病床(55床)に入院する患者の06年4月分の診療報酬600万円を患者が加入する健康保険組合などからだまし取った疑いが持たれている。

06年の4月の診療報酬約1000万円をだまし取った疑い。(東京)

06年4月分の一般病棟の入院基本料について、1200万円を県社会保険診療報酬支払基金からだまし取った疑い。(中日)

11月27日
診療報酬1200万円をだまし取ったとして、水谷容疑者を再逮捕。総師長のA容疑者、元医事課主任B容疑者を逮捕した。
27日、静岡地検沼津支部は、水谷容疑者を健康保険法違反罪で起訴。元総務課長は処分保留とした。(中日)

27日現在で、都内からの入院患者は76人に減少。いぜんとして250人以上の患者でほぼ満床という。(東京)

診療報酬をだまし取ったとみられる期間に実際に勤務した看護師は、本来必要な人数の3分の2程度しかいなかったことが27日、わかった。
関係者によると、一般病棟は55床で、満床の状態が多かった。看護師の勤務が変則2交代制だった同病院の場合、比率維持のためには最低16人の看護師が必要だったが、実際は10人程度しか働いていなかったという。
A容疑者は「病院が不正受給をしているのは知っていたが、金額は知らない」と話しているという。(毎日28日)

12月18日
事務長ら3人詐欺で起訴
静岡地検沼津支部は18日、水谷、A、Bの3人を詐欺罪で起訴した。
起訴状では、3人は共謀して2006年4月、一般病棟の同月分の入院基本料について、患者数に対する看護師数の割合が「15対1」の基準を満たしていないのに、看護師数を水増しするなどして基準に達しているように見せかけた虚偽の書類を作成。これを静岡社会保険事務局(現・東海北陸厚生局静岡事務所)に提出し、6月に審査支払い機関である県社会保険診療報酬支払基金など2団体から計約1200万円をだまし取った――としている。
地検支部は、4月以降の不正受給分についても追起訴する方針。
一方、元総務課長Cを健康保険法違反で沼津簡裁に略式起訴し、同簡裁は罰金20万円の略式命令を出し、即日納付した。(12月19日読売)

2009年(平成21年)
1月12日
病院長に詐欺容疑で逮捕状 診療報酬、静岡県警
県警は12日、吉田晃院長が不正請求を指示し診療報酬を詐取した疑いが強まったとして、詐欺容疑で院長の逮捕状を取った。13日にも逮捕する方針。
県警幹部によると、水谷被告は吉田院長の関与を否定しているが、複数の病院関係者が聴取に対し、院長の指示を証言したという。診療報酬は院長名義の口座に振り込まれていた。(共同)

1月13日
静岡、詐欺容疑で病院長を逮捕 診療報酬不正請求を指示
 静岡県東伊豆町の「静和病院」による診療報酬詐欺事件で、静岡県警は13日、不正請求を指示し診療報酬約1200万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いで同病院院長吉田晃容疑者(69)を逮捕した。
 調べでは、吉田容疑者は事務長の水谷信子被告(74)=詐欺罪などで起訴=らと共謀し、入院患者に対する看護師の人数に応じて支払われる診療報酬制度を悪用。看護師数を水増しして静岡社会保険事務局に報告し、2006年6月、静岡県社会保険診療報酬支払基金などから同年4月分の診療報酬の一部、入院基本料約1200万円をだまし取った疑い。
 調べに対し吉田容疑者は容疑を否認しているという。
 県警は昨年11月、詐欺容疑で水谷被告ら3人を逮捕。診療報酬が吉田容疑者名義の口座に振り込まれていたことなどから、病院ぐるみで不正請求を行っていたとみて同容疑者の関与を捜査していた。(共同)

2月21日
下田署などは、20日水谷被告ら2人を、06年8月から11月の4ヶ月分の入院基本料約4000万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で地検沼津支部に追送検した。院長についても、証拠が固まり次第追送検する方針。(毎日)

2月23日
水谷被告の初公判が、23日、地裁沼津支部(有賀貞博裁判官)であった。水谷被告は健康保険法違反の起訴内容は認めたが、詐欺罪については「かかわっていない」と否認した。
検察側は冒頭陳述で、水谷被告が元師長に「架空のナースで補う。パートを常勤にする。何とかやってよ」などと延べ、偽の勤務表作りを依頼したと指摘。また、吉田被告は「いないナースのところに茶器セットを送れ」などと述べ、退職した看護師に名義貸しの了解を取るように職員に指示したと主張した。
水谷被告は「看護師数が足りないのは知っていたが、勤務表の作成には携わっていない」「(診療報酬の)申請書類も見たことがない」と述べた。(毎日)

3月2日
3日までに管理者変更を届けるように県から指示されていた静和病院は、新たな管理者を選任したとの書類を2日に県に提出したが、不備があったとして県は受理を延期した。社員総会が定款通りに成立していないため。2月に一般病床を休止し、療養型の252床の運営。3月3日現在の入院患者数は207人。法基準を満たし、診療を続けている。(読売)

3月3日
A被告、B被告の初公判が地裁沼津支部(有賀貞博裁判官)であった。2被告ともに06年4月分の入院基本料1200万円をだまし取ったされる起訴内容を認めた。(毎日)

3月6日
下田署と静岡県警生活環境課は6日、病院長の吉田晃被告を、同様の手口で約7400万円をだまし取っていたとして、詐欺の疑いで静岡地検沼津支部に追送検した。
吉田容疑者は、水谷被告、A被告、B被告らと共謀して、2006年4月から11月分の入院基本料8600万円を不正受給した疑い。(静岡)

3月6日
県は、病院に対して入院患者は転退院させ、新たな患者の受け入れは注するように指導してたことが6日分かった。3日を過ぎても管理者不在の状態が続いているため。(朝日)

3月17日
静和会は、病院管理者(院長)の変更届を県に提出、県は受理した。T医師が院長、理事長に就任した。(静岡)

3月18日
地検沼津支部は、吉田晃被告を06年5月から11月分約7400万円をだまし取ったとして詐欺罪で追起訴した。(毎日)

4月22日
静和病院不正請求事件静和病院(東伊豆町奈良本)の診療報酬不正請求事件で、詐欺罪に問われた元院長の吉田晃被告(70)の初公判が22日、静岡地裁沼津支部(片山隆夫裁判長)であった。吉田被告は「詐欺行為をすることは絶対にあり得ない」と起訴事実を全面的に否認した。(読売)

5月27日
静和病院の診療報酬詐欺:元総師長に懲役2年6月求刑 /静岡
 東伊豆町奈良本の静和病院をめぐる診療報酬詐欺事件で、詐欺罪に問われた元総師長のA被告(57)=千葉県船橋市=と、元医事課主任のB被告(36)=静岡市駿河区=に対する論告求刑公判が27日、地裁沼津支部(片山隆夫裁判長)であった。検察側は「医療制度の根幹を揺るがす重大事件だ」と述べ、A被告に懲役2年6月、B被告に懲役2年をそれぞれ求刑した。判決は7月16日に言い渡される。

 検察側は論告で、両被告について「利益目的の犯行で、動機に酌量の余地はない。計画的な犯行で、その悪質性は甚だしい」と指弾。診療報酬の不正請求に関しては、A被告が直接かかわった総額が約8703万円で、B被告に関しては約4654万円であることを指摘した。

 一方、両被告の弁護側は、元院長の吉田晃被告(70)=詐欺罪で公判中=と元事務長の水谷信子被告(74)=同=を事件の「首謀者」と指摘。A被告とB被告については「従属的な立場に過ぎなかった」などと述べ、執行猶予つきの判決を求めた。(毎日)

7月16日
不正請求 元院長との共謀認定
 静和病院(東伊豆町奈良本)の診療報酬不正事件で、詐欺罪に問われ た同病院元総婦長A、元事務職員B両被 告の判決が16日、静岡地裁沼津支部であった。片山隆夫裁判長は、 元院長の吉田晃被告(70)(詐欺罪で公判中)らとの共謀を認定し たうえで、「首謀者または主導的立場ではなかった」として、A被 告に懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)、B被告 に懲役2年、執行猶予4年(求刑・同2年)をそれぞれ言い渡した。
 判決などによると、A、B両被告は吉田被告や元事務長の水谷信 子被告(74)(詐欺罪などで公判中)と共謀し、2006年4月、 病院の一般病棟の入院基本料について、看護師数を水増しするなどの 方法で基準に達しているかのように装った虚偽の書類を作成し、これ を静岡社会保険事務局(現・東海北陸厚生局静岡事務所)に提出。2 団体から診療報酬をだまし取った。関与した額は、A被告が計約8 700万円、B被告は計約4600万円とされる。

2010年(平成23年)
3月10日
静和病院不正請求、元院長に実刑判決 静岡地裁支部
診療報酬を不正請求してだまし取ったとして詐欺罪に問われた「静和病院」(静岡県東伊豆町奈良本)の元院長・吉田晃被告(71)と、詐欺罪や健康保険法違反に問われた元同病院事務長・水谷信子被告(75)の判決が10日、静岡地裁沼津支部であった。片山隆夫裁判長は吉田被告に懲役6年6月(求刑・懲役7年)、水谷被告に同5年6月(求刑・同6年)を言い渡した。
 判決によると、吉田、水谷両被告は2006年4月、同病院の元総婦長(詐欺罪で執行猶予付き有罪判決が確定)らと共謀し、一般病棟の入院基本料について、看護師数を水増しするなどした虚偽の書類を作成し、静岡社会保険事務局(現・東海北陸厚生局静岡事務所)に提出。計約8700万円の診療報酬をだまし取った。
 また、水谷被告は06年7月と07年7月、アルバイトや非常勤の看護職員が常勤看護師として勤務したように装い、実際よりも多い給与を記載した書類を三島社会保険事務所に提出した。両被告は初公判から一貫して詐欺罪について無罪を主張していた。(読売)

3月15日
静岡 静和病院事件 元院長ら控訴
 静和病院(静岡県東伊豆町)が診療報酬を不正受給した事件で詐欺などの罪に問われ、静岡地裁沼津支部に十日、実刑判決を言い渡された元病院長吉田晃(71)=懲役六年六月=と元事務長水谷信子(75)=懲役五年六月=の両被告が十五日、判決を不服として東京高裁へ控訴した。(中日)

9月30日
静和病院が閉院
 診療報酬を不正受給したとして元院長らが詐欺罪などで静岡地裁沼津支部で有罪判決(東京高裁に控訴)を受けた「静和病院」(東伊豆町奈良本)が30日、閉院した。入院患者は全員転・退院し、引き受け手のない患者が出る最悪の事態は避けられた。
瓦崎理事は控訴審中の元院長と元事務長に対しては、「素直に罪を認めてほしい」と話した。
 病院は、今後10日以内に病院の「廃止届」を県に提出する。病院の土地や建物をどうするかは未定という。 (読売)

11月12日
不正請求事件 静和病院 存続探る 静岡県は廃止指導
 「静和病院」(東伊豆町奈良本)を舞台にした診療報酬の不正請求事件で、詐欺罪に問われ東京高裁で公判中の元院長・吉田晃被告の実弟にあたる医療法人社団静和会の吉田保理事が、読売新聞の取材に応じた。同病院は9月いっぱいで診療をやめているが、吉田理事は何らかの形で病院を再開・存続させたいとの考えを示した。
 静和病院は9月中旬の時点で入院患者が50人いたが、診療を終えた9月末までに全員が転退院したほか、看護師やヘルパー、事務職員など約90人の職員も全員解雇された。医療法人社団静和会は病院の「休止届」を県に提出し、10月18日付で受理されたが、県医務課は「病院の再開は困難と考える。廃止届を出すよう指導していきたい。」としている。
 診療を休止する前の静和病院は、入院患者の大半が生活保護の受給者だった。こうした病院のあり方について、吉田理事は「医療を受ける必要がないのに入院し続ける『社会的入院』が問題になっているが、静和病院には、家族が引き取りを拒否したため、退院しても行き場がなくなった患者が実際に10人以上いた。」と振り返り、「『終局の病院』として、静和病院は必要な存在だったと思う。現実に目を向けないと、同じ問題が繰り返される。今回、転院した患者が病院をたらい回しされないかが心配だ。」と訴えた。(読売)

11月25日
元院長らの控訴棄却
静和病院(東伊豆町奈良本)を舞台にした診療報酬不正請求事件で詐欺罪に問われた元院長・吉田晃被告(71)と、詐欺罪や健康保険法違反に問われた元事務長・水谷信子被告(76)の控訴審判決が25日、東京高裁であった。小西秀宣裁判長は「組織的、継続的な偽装が認められる。両被告は病院経営の全般を統括、指揮する立場で関与していた」と述べ、吉田被告を懲役6年6月、水谷被告を同5年6月とした1審・静岡地裁沼津支部判決を支持して両被告の控訴を棄却した。両被告の弁護人によると、吉田被告は最高裁に上告する方針。水谷被告は今後対応を検討するという。(読売)

12月2日
元院長らが最高裁に上告 静和病院不正受給
 東伊豆町奈良本の静和病院(診療休止中)が診療報酬を不正受給していたとされる事件で、東京高裁に控訴を棄却された元院長(71)=詐欺罪=と元事務長(76)=同罪、健康保険法違反の罪=の両被告の弁護人が2日、判決を不服として最高裁に上告した。
 控訴審判決は、両被告を事件の首謀者と認めて元院長に懲役6年6月、元事務長に懲役5年6月を言い渡した一審判決を全面的に支持し、控訴を棄却した。判決言い渡し後、接見した弁護人に対し、両被告は判決への不満を述べていた。
 判決によると、2人は元事務職員らに指示して、一般病棟の施設基準を「15対1看護要件」に見合うよう、看護師数を水増しした虚偽の届出書を提出し、診療報酬をだまし取った。両被告は詐欺罪について無罪を主張している。 (伊豆)

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